マニュアルモードに関する考察
Flyaway対策としてマニュアルモードが有効との記載をネットでよく見かけます。 真偽のほどはわかりませんが、NAZA-Mのマニュアルを読むとマニュアルモードではいくつかのセンサーを切り離すので、センサー類の故障に起因しているFlyawayならマニュアルモードで制御を取り戻すことができそうです。Att.モードでもGPSやコンパスを切り離すようなので、制御を失ったらまずはAtt.モード、それでもだめならマニュアルモードとエスカレーションすることがよいのではないでしょうか。
IOCにはホームロックとコースロックの2種類がありますが、NAZA-Mのマニュアルに よるといずれもGPSモジュールが必要とされています。一方、GPSモジュールは、GPS Atti.モードで必要、Atti.モードでは不要とされているので、Atti.に切り替えるとMain Controllerから外付けされているGPS(およびコンパス)が切り離されると推測されます。
Manualモードではどのようなセンサーを利用しているかマニュアルからは読み取れませんが、後述のような考察からジャイロのみを利用していると思われます。
GPS Atti.Atti.Manual
IOCホームロック××
コースロック××
センサ3軸ジャイロMain Controller内蔵
3軸加速度計×
気圧計(高度計)×
コンパス××Main Controller外付
GPS××

ジャイロと機体制御
ジャイロは機体が軸からどれだけずれているかを検知するセンサですので、操縦者が操作しなければ、そのずれを修正するような制御が自動的にかかります。 これはすなわち、機体を水平に維持し、ロール角、ヨー角、ピッチ角を一定に保つことです。
言うまでもなく、プロポのスティック操作でこれらの角度が変わりますが、マニュアルモードにおいては、ピッチ角とロール角はスティックの変化量に対応し、スティック中央で機体は元の位置(水平)に戻るものの、ヨー角方向については、スティックの変化量はヨー角の変化速度であって、中央に戻してもヨー角の変化が止まるだけで、機体は元の位置(方角)には戻りません。

加速度計と機体制御
加速度計はいわば機体にかかる力を検知するセンサです。突風や乱流といった風の変化は加速度として検知されるので、それに対抗するような制御をかけることができます。原理的には離陸前の静止状態を基準として加速度が検知されるので、飛び立って風の力を受ければそれに対抗して位置を維持するような制御がかかるものの、機体の飛行によって基準はずれるものと思われます。GPSはそれを補正するために利用されているのでしょう。
GPS Atti.モードおよびAtti.モードにおいては、プロポのスティックが中央にあれば、加速度が0になるように、ロール・ヨー・ピッチが制御されます。

マルチコプターの制御
上記のようにジャイロで3方向、加速度で3方向ありますが、プロポのスティック操作の4chと同様、4つのパラメータでマルチコプターは制御されます。これらの関係をまとめると次のような表になります。
ピッチ角やロール角を変化させることで重力との合成力で水平方向の加速度を得る仕組み(右図)ですので、ピッチ角やロール角を維持したままでは左右前後への移動はできません。逆にその制約はあるものの4chであらゆる方向への移動を可能としています。

パラメータ
(プロポのスティック)
備考
ジャイロピッチ角ピッチ重力との合成で左右方向の加速度も生じる
ロール角ロール重力との合成で前後方向の加速度も生じる
ヨー角ヨースティック移動量はヨー角の変化速度
加速度前後方向ピッチピッチ角も変化する
左右方向ロールロール角も変化する
上下方向スロットル
図は高度を維持したまま後退(後方への加速度を得る)するケースです。
この図からもわかるように、高度を維持するには推進力(スロットル)を上げる必要があります。 GPS Atti.モードやAtti.モードではそれを意識しなくてすむのは、スロットルも自動制御されているためです。

以上を考えると、プロポからの制御は、GPS Atti.モードやAtti.モードでは加速度を操作するようなロジックに、マニュアルモードはジャイロの軸からのずれを操作するロジックになっているであろうと推測します。したがって、前者と後者では制御プログラムにも違いがあり、その観点からも機体の制御が異常になった場合にはよりシンプルな制御ロジックである(しかし操縦は難しい)マニュアルモードを選択するのは有効と思われます。
機器が異常になったら手動で制御する、というのは本物の航空機の設計思想にも取り入れられており、妥当な考え方ではないでしょうか。

マニュアルモード失敗例
初めてマニュアルモードを使おうと、Atti.モードでホバリング中にマニュアルモードに切り替えたらあっという間に墜落しました。下のビデオはその時の様子です。
モード切り替えは3秒目くらいで、音を聞いてもわかるように回転数が低下し、姿勢を維持したまま3m程度の高さから急降下、そこから2秒足らずで地面に達しています。その後、水平姿勢を取り戻しているところを見るとやはりジャイロは効いてる様子です。しかし、着地の反動で右方向に流れているので加速度計は働いていないようです。その後のクラッシュは右側の土手に衝突したためです。
この落下で、自作のスキッドが折れ、H3-D3ジンバルの台も歪んでしまいました。ジンバルは高価な部品ですので、マニュアルモード練習時にははずすようにした方がよいでしょう(といっても標準のピンを使っているとはずすのに苦労します)。
また、ネットを調べてみると、マニュアルモードでホバリングさせるには、スロットルを75%程度に保持しなければならないようです。Atti.モードからマニュアルモードに切り替える際には十分な高度を確保するか、練習は離陸からマニュアルモードにしておいた方がよいかと思います。
最初の着地で折れたのは右側の脚。2箇所でおれて中間部分は紛失した。 ビデオを注意深くみると折れた部分が左方向へ飛んでいるのがわかる。 ジンバルとカメラのガードにはなったが、それでもジンバルの台座が歪んだ。 もう少し強度があった方がよいのかも知れない。